気が付けばあたしは車の中にいた。


母親の車でも父親の車でもない。


見たことのない大きな車の後部座席にあたしは寝かされていた。


後部座席のシートはすべて取り払われていて、小さなベッドが付けられている。


あたしは、そこにいた。


「お目覚めですか?」


どこかで聞き覚えのある声がして、あたしは目だけを動かしてその人物を探した。


そして、オークション会場の受付にいたスタッフの顔を見つけた。


男性はベッドの隣に座り、あたしの様子をみていたようだ。


一瞬思考回路が停止する。


何も考えられないまま、オークション会場を思い出していた。


オレンジ色の蛍光灯。


その下に用意されていたベッド。


腰に打たれた注射。


そして……切断された、自分の足!!!


「いやぁぁ!!」


悲鳴を上げて逃げようとするあたしを、その男性は取り押さえた。


「安心してください手術は成功です」


あたしの体を押さえつけるようにしながら、男性は穏やかな口調でそう言った。


「足……あたしの足が……」


それでもあたしは自分の足を確認することもできず、恐怖で体が震え始める。