気が付けば、あたしは毎日のようにオークションのメールが送られてくるのを待つようになっていた。


次々と成功者が現れるようになり、どこか焦る気持ちもある。


あたしだってここで留まるような人間じゃない。


オークションで才能さえ購入すれば、どこまでだって行ける事ができる人間だ。


そんな思いが日に日に強くなっていく。


自分の机でそんな事を考えていると、ポンッと肩を叩かれた。


「よぉ、どうした?」


振り返ると、クラスメートの広野輝夜(ヒロノ カグヤ)が立っていた。


輝夜はクラスで一番人気の男子生徒で、背が高くてスポーツが得意だ。


そんな輝夜があたしの事を気にかけていることは、以前から知っていた。


「別に、どうもしないよ」


「本当か? お前、まだ体調が悪いんじゃないか?」


そう聞かれて、あたしは首を傾げた。


数秒考えてから、そういえばオークションに参加するために早退したんだったと思い出した。


自分でもすっかり忘れていたことを、輝夜は覚えてくれている。


「もう大丈夫だよ」


「それならいいんだけどさ、眉間にシワが寄ってたぞ」


そう言って輝夜はあたしの眉間に触れた。