これは確かにカメ男が手を焼くわけだ。
先週の1週間で、ヤツは優くんのおかげでだいぶお疲れモードになっていた。
それはきっと、この悪気なしに土足で踏み込んでくる彼の性格に原因があると見た。


これが会社じゃなければ、私は彼と仲良しの友達になれたかもしれないけど。


「梢って意外と真面目に仕事やってんだね~!もっと適当かと思ってたよ!」


とかけっこう失礼なことを言ってくる。


それもこれも、いつの間にかなんでも話せる仲みたいになってるのがいけないんだ。
私が怒ると彼は喜ぶし。
冷たくしても喜ぶし。
カメ男みたいにスルー出来ない私の性分が、優くんにとっては楽しくてたまらないらしい。





外回りから帰ってきた田嶋と奈々が、2人でランチに行ってくると言ってきたのは優くんに仕事を教えるようになって4日目のことだった。


そうなってくると私は優くんとまさかの2人きりでのランチになる。
ラブラブな奈々たち2人を見送ったあとにチラリと隣を見ると、当然のように優くんがニッコリ笑いかけてきた。


「今日はどこにランチ行く~?」


黙っていれば超イケメンのこの人。
しゃべるとそれが薄れてしまうから驚きだ。
今まで歴代の彼女にフラれ続けてるのって、その残念さのせいじゃなかろうか。


「今日は定食屋にしよっか」


奈々とならオシャレなカフェに行くところだけど、一応優くんは男だし、と思って定食屋を提案したのに。
彼は不満げに首を振る。


「え~!いつも行くみたいな可愛い店がいい!」

「優くんってそういうお店平気なんだ。しゅ、須和なんてめちゃくちゃ嫌がるのに」

「へぇ~、そうなんだぁ!」


私たちはそんな会話をしながら、結局2人きりでランチに向かうこととなった。