「ねぇ公恵、昨日dashのファンだって言ってたよね?」


少し大きな声でそう言いながら席を立つ。


「うん、そうだけど?」


「昨日あの後優也君から連絡があって、dashの極秘ライブ情報を仕入れたんだけど」


そう言うと公恵が机の手前で立ち止まった。


「極秘ライブ?」


「うん。6月13日に《mother》で小さなライブをするらしいよ」


そう言うと、公恵は「《mother》で!?」と、目を見開いた。


「声が大きいよ公恵。ライブは極秘。だからチケットもすごく少ないんだから」


人差し指を立て、小声でそう言うあたし。


公恵は慌てて声量を下げた。


「なんでそんな情報を優也君が知ってるの?」


そう聞かれ、あたしは一瞬言葉に詰まった。


しかし、すぐに言いわけが浮かんでくる。


「あ、あたしイベント会社でバイトしてるって言ったじゃん? 優也君と知り合ったのはそのバイト先でなんだ。


一緒に働いてる内に優也君はどんどん上の人たちに気に入られて、いろんな情報を先取りできるようになったの。


だから、この情報を知っているのはあたしたちだけってこと」


早口で嘘を並べ立てる。