浩太は昇降口からゆっくりと校舎の中へ入っていった。




真夜中の校舎は、真っ暗で、不気味だった。




でも浩太は、夏希からの誘いに応えるために、暗闇の校舎を屋上目指して歩き続けた。




「私ね、浩太のバスケの練習を見るのが好きなんだ」




浩太は校舎の屋上を目指して歩きながら、夏希との過去の会話を思い出していた。




「浩太のシュートが、きれいな弧を描いて、リングの中に吸い込まれていくとき、私の心がスッとするの。

いいよね、浩太にはバスケがあって……。

私には何の取り柄もないから……。

私には何も……」