翔子は海水の中の息苦しさから逃れようと、必死に足をバタつかせた。




早く水面の上に顔を出さなくては、自分は息ができなくて死んでしまう。




翔子は夏希の手を振りほどこうと、体の自由がきかない水中で腕に力を込めたが、翔子の体はさらに海の底に引きずり込まれていくだけで、翔子はそのときハッキリと死を意識した。




〈 香澄、和也、圭吾……。

お願い、私を助けて!

私はまだ死にたくない! 〉




人気のない海で、自分を助けてくれる人はいないだろう。




今、この海で、自分の命の危機に気づいてくれる人は、誰もいないのだから……。