〈 私の後ろには、誰もいるはずがない。

だって、私が音楽室のドアを閉めたとき、音楽室には誰もいなかったから…… 〉




後ろを振り返ってはいけない予感がした。




後ろを振り返って、そこにいる誰かを見たとき、自分はそこにいる幽霊に取り憑かれてしまいそうな気がしていた。




〈 冷静さを取り戻して。

私は今の声に気づかなかったことにして、歩いていくの。

校舎から出れば、きっと大丈夫。

私はそれまで、振り返らない 〉




翔子は、ドキドキと大きな音を立てて鳴り響く心臓の音を感じながら、プルプルと震える足を前に出して歩き続けた。