武士さんも百合子も、もう私のところには戻ってこないだろう。


武士さんは近いうちに、私に別れ話を切り出すのだろう。


きっと私は、この家を出され、頼れる人もなく一人になる。


私にかかっていた魔法は解け、私はまたあの惨めな寺田小夜子に戻ってしまう。


私が夢見ていた時間が、長く幸せだったから、もう私はあの惨めな毎日に耐えられないかもしれない。


もう四十歳の誕生日を間近に控える私に、新しい幸せが待っているとは思えなかった。