願いは叶う

「私はね、お風呂に沈められた息苦しさで、必死にもがいているうちに、ハッとして目を覚ましたの……」


私は、体を震わせている母の顔を見つめ、ゆっくりとした口調で話しかけた。


「お母さん、もう大丈夫よ。

だって、もう悪い夢は通り過ぎて行ったから……」


私がそう言うと、母は大きく首を横に振って、私に訴えかけた。


「小夜子、違うの……、違うのよ!

私が本当に悪い夢を見たのは、目を覚ました後なの」


母はそう言って、私の顔を見つめた。

「私が目を覚まして、窓際に目をやると、夢の中に出て来た長い黒髪の看護師が、窓の外から私を見下ろしていたの!

小夜子、ここは三階なのよ。

どうして窓の外に、人が立っていられるの?」