「お母さん、いったい、どんな夢を見たの?」
私が母にそう言うと、母は怯えた目を私に向けた。
「私が見たのは、風呂に沈められる夢だよ」
「お母さんが、お風呂に沈められる夢?」
「そうだよ。
長い黒髪の看護師が風呂場に入ってきて、突然、私を湯船に沈めたんだ」
「でもお母さん、それは夢なんでしょ?」
母は小さな体を震わせ、話を続けた。
「優しい顔をした看護師だったんだよ。
でも、その看護師が急に私を殺そうとして……」
「でも、お母さん。
ここはお風呂じゃなくて、病室よ。
お母さんは、嫌な夢を見ただけなのよ」



