体を震わせている母は、今だに私が病室に来たことに気づいていなかった。


「寺田さん、ずっと今みたいな感じで、ときどき『怖い』とか『殺さないで』とか言うんです」


私は怯えている母の顔を見つめ、肩を揺すりながら話しかけた。


「お母さん……、いったい、どうしたの?

お母さん……」


母の虚ろな目が、ふらふらと泳ぎながら私に向けられた。


「小夜子……」


母は、ようやく私に気づいた様子だった。


「お母さん、どうしたの?

いったい、何があったの?」


母は、怯えた様子で私を見ていた。


「小夜子、私ね、夢を見たんだよ……」


「夢?」


「そう、あれは夢だよ。

そんなことは私にもわかってるんだけど、何だか、夢じゃないような、夢だけじゃ終わらないような……」