卒業式を間近に控えたある日、母が風邪をひいて熱を出した。


私は、母が心配で学校を休み、一日中、母のそばにいた。


熱を出し、布団で寝ている母を見ながら、母は周りとの競争には、決して勝てない人なんだと、私は思った。


学校の先生たちは、努力すれば何でもできると、教壇に立って私たちに熱弁を振るっていた。


でもそれは、先生たちが母のような弱い存在の人がいることを知らないからだと、私は思った。


母は、努力したくても努力することもできず、体に負担がかからないような仕事をこなすことが精一杯だった。