明日、退院だというのに、また会いにくると言ったらしい田所光江という女を、絹子は薄気味悪く思った。


絹子は今まで生きてきた中で、田所光江という名前の女と関わりを持った記憶がなかった。


でも、もしかしたら、小夜子にはこの女性との付き合いがあったのかもしれなかった。


小夜子は、田所光江という名前を知っていたから。


でも、小夜子と田所光江という女性が親密な関係であったとも、絹子には思えなかった。


小夜子が、田所光江という名前を聞いたとき、小夜子は驚き、私にこう言ったから。


〈 お母さん、その人がお見舞いに来るはずはないわ。

だってその人は、もう死んでいるのよ 〉