その日の夜、私が眠りについたとき、家の電話が鳴って、私は目を覚ました。


いったい、誰がこんな時間に……。


私がふと、壁に掛けてある時計に目をやると、時計の針は、夜の十二時を指していた。


私は、十回目のコールで受話器を手に取った。


電話を掛けてきたのは、母が入院している香川総合病院の医院長である香川先生であった。


私は、香川先生の話を聞きながら、自分の時間が止まってしまったような錯覚におちいった。


私は、香川先生の話が信じられなかった。


夢であって欲しいと思った。


だって、お母さんが……。


私の瞳から、再び、涙が溢れ出した。


お母さんが、病院の屋上から、飛び降りたなんて……。


私は受話器を落とし、膝から崩れ落ち、声を上げて泣き続けた。