「小夜子……。

もう、帰ってきたのかい……」


母の声は、途切れ途切れで弱々しかった。


私は母の顔をじっと見つめ、母に言った。


「お母さん、どうしたの?

また具合悪いの?」


母は力ない目で私を見つめ、消え入りそうな声で私に言った。


「体調は、悪くないわ……。

ただ、ちょっとだけ、眠かっただけよ……」


母の言葉を聞いて、私の口調は思わずきつくなった。


「嘘よ!

お母さん、どうしてそんな嘘をつくの?」


「嘘だなんて……。

私はただ、本当に眠くて……」


「だったらお母さん、どうしてこんなに机の上が散らかっているの?」


私がそう言って、赤い顔をしている母の額に手を当ててみると、母の額は燃えるように熱かった。