六月末の蒸し暑い日の夕方に、私が学校から家に帰ってくると、母は内職で使う封筒を机の上に散乱させたまま、机にうつ伏していた。


玄関から見えた母のただ事ではない様子に私は驚き、靴を脱ぎ捨て母の元に駆け寄った。


「お母さん、どうしたの?

具合悪いの?」


私が母の隣りに座り、母の顔を覗き込むと、母は大粒の汗をかいて唸っている。


また母の体調が悪くなってしまったのかしらと思うと、私は気持ちが焦って、早口でまくし立てた。


「お母さん、大丈夫?

ねぇ、お母さん!」


母は私の言葉に気づいて顔を上げ、赤くなった顔を私に向けた。