「もしも、今回のことが原因で、百合子の勉強がおろそかになってしまったらどうするの?」


「いいじゃないか。

勉強のことなんて、少しくらい」


「よくないわ!」


私は、武士の顔をじっと見つめた。


「私は、百合子に幸せになってもらいたいの。

そのためにも、この子には教育が必要だわ。

この子が輝ける人になるためには……」


「そんなことを言ったって、百合子は怯えてるじゃないか!」


「怖さなんて、一瞬よ!

でも、深い霧みたいな絶望は、簡単なことじゃ消えないの」


感情が高ぶってしまった私の目には、みるみるうちに涙が溜まっていった。