妖しく溺れ、愛を乞え


「どこかに居る筈だ」

「どこに」

「……ちょっと、分からない」

「そんな」

「力はあっちが上だし、気配を感じることができても、場所を特定することは、俺には無理だ」

 圭樹でも分からないなんて。でも、探さなくちゃ。どこに居るのだろう。

「探さなきゃ。彼、かなり弱っていたの」

「分からないけれど……なんとなく見当は付く。あいつはきっと、そこしか行くところが無い」

「どこ!」

 焦る気持ちで、つい強い口調になってしまう。落ち着かないとだめだ。

「落ち着けって。きみがひとりでは来られないところだ」

 あたしが、行けないところ?

「それは一体……」

「たぶん、雪の里だ」

「あ……」

「あいつの、俺たちの……故郷だ」

 故郷。生まれた土地。そこに、居るかもしれない?

 そうか、そうかもしれない。まだ確定したわけではないけれど。
 以前、ホテルで見せてくれたあの映像。あそこが実家みたいなものだと言っていた。

 山の奥深く。雪深い里。雪の妖怪たちの村。

「……大丈夫か?」

 圭樹の声は、とても静かで、真剣だった。

「雅ちゃんが、これからの運命を受け入れる決意があるなら、連れて行ってやる」

 どっちに転ぶか、なにも分からない。でも、このままじっとしてはいられない。

「そうじゃないなら……あいつ、このままそっとしてやってくれ」

 寂しそうな声と、真剣な思い。仲間なんだもの。寂しくないわけが、無いんだ。

 どうしようも無い運命。その場に立ち会った時、自分でもどうなるのか分からないけれど、でも。