何ヶ月振りかで訪れたその場所は、何も変わっていなかった。
高層住宅が何棟も建ち並び、整然と造られた街。
大きな公園。
その街並をぐるりと取り囲むように、古くからの民家が不規則に並んでいる。
整然と造られた高層住宅街と比べると、昔からの街並は、道も細くくねっている。
時折、ぽつんぽつんと真新しいアパートやワンルームマンションが顔を覗かせる。
一面灰色の建物が見えた。
あの日以来だ。
変わっていない。
いや、そうでは無い。
彼女が居なくなってしまった今、その建物はただの器でしかない。
あの建物を見ても、何の喜びも感じない。
前に来た時は、その灰色の壁が遠目に飛び込んで来た瞬間、心が踊る位に身体が熱を帯びたものだ。
マンションの前を通る。
彼女の自転車があったマンションの駐輪場には、もうその自転車が無い。
裏側に回ってみる。
ベランダから彼女が居た部屋を見た。
以前あった淡いブルーのカーテンは既に無く、空き部屋だと判る。
彼女が毎日歩いていた道をなぞってみる。
少しでも、僅かでも、彼女の残り香を感じたかった。
コンビニ迄の道……
駅迄の道……
週末によく通っていた珈琲屋への道……
何一つ、彼女の面影は無かった。
所々で立ち止まっていると、たまにすれ違う歩行者が妙な顔をして見つめて行く。
その歩行者達が目にした男は、道に立ち止まっては呻くように泣いていた。
高層住宅が何棟も建ち並び、整然と造られた街。
大きな公園。
その街並をぐるりと取り囲むように、古くからの民家が不規則に並んでいる。
整然と造られた高層住宅街と比べると、昔からの街並は、道も細くくねっている。
時折、ぽつんぽつんと真新しいアパートやワンルームマンションが顔を覗かせる。
一面灰色の建物が見えた。
あの日以来だ。
変わっていない。
いや、そうでは無い。
彼女が居なくなってしまった今、その建物はただの器でしかない。
あの建物を見ても、何の喜びも感じない。
前に来た時は、その灰色の壁が遠目に飛び込んで来た瞬間、心が踊る位に身体が熱を帯びたものだ。
マンションの前を通る。
彼女の自転車があったマンションの駐輪場には、もうその自転車が無い。
裏側に回ってみる。
ベランダから彼女が居た部屋を見た。
以前あった淡いブルーのカーテンは既に無く、空き部屋だと判る。
彼女が毎日歩いていた道をなぞってみる。
少しでも、僅かでも、彼女の残り香を感じたかった。
コンビニ迄の道……
駅迄の道……
週末によく通っていた珈琲屋への道……
何一つ、彼女の面影は無かった。
所々で立ち止まっていると、たまにすれ違う歩行者が妙な顔をして見つめて行く。
その歩行者達が目にした男は、道に立ち止まっては呻くように泣いていた。