野間口妙子は、検察側の執拗な程の質問に、木山悟がかなり動揺しているのが判った。

 それ以上に隣の森山は血が昇ってしまったのか、やたらに

「異議あり!」

 を口にしている。

 なんでも連発すれば良いってものでは無い。

 野間口妙子が、森山を何とか落ち着かそうとして、時折小声でアドバイスをするのだが、殆ど耳に入っていない。

 余りにも聞く耳を持たない森山に苛立ち、野間口妙子はつい声を大きくしてしまい、裁判長から窘められてしまった。

 こんな事では、午後に予定している弁護側からの質問が心配だ。

 上手く段取り通りに森山がやれれば、午前中の失点など簡単に挽回出来る筈なのだが……

 野間口妙子の思いと同様に、傍聴席で午前中の審議を見守っていた浅野も、森山を心配していた。