「先生。おはようございます」

こんな時でも丁寧に美鈴は頭をさげた。

「……帰りなさい」
そう言うと、先生は顔を伏せた。

美鈴が千夏を見やる。

千夏はあごを動かし、兼子先生の方を指した。


___聞き出せ、という命令なのだろう。


「わたくしは学級委員です。知る権利がございます」
美鈴がメガネを直しながら、きっぱりと言う。

しかし、今日の兼子先生は違った。

「だから何? 今、それどころじゃないのよ!」

声を荒げると、急ぎ足で校門の中に駆けて行った。