「なーんてね、嘘だよ」
「なんだよ」
「……もう別れよ?」
振り向いてくれるまで、待つのは無理だ。
心が死んじゃう。
こっちを見てと、心が泣き続けて、苦しくて寂しくて死んじゃう。
「……ごめん」
彼は自分で、心当たりがあったのだろう。
“どうして”では無く“ごめん”と言った。
「……私、武俊くんの好きな人にはなれなかったね」
「ごめん」
「他に好きな人がいるなら、そう言ってくれたら良かったんだよ」
責めるような口調になった。
嫌だな、最後まで“いい子”でいたいのに。
「誰なの?」
武俊くんの心に、ずっといる人は。
「……言えねー」
「教えてよ。最後のお願いくらい聞いてくれてもいいでしょ」
「俺も望みねぇから。逃げられるし、多分嫌われてるし」
「だったら私の方を向いてくれても良かったのに」
「……ごめん」
でもそれが出来ないくらい、武俊くんの頭は、私の知らない誰かで一杯だったんだよね。
名前を言わないのは、彼女を守りたいから?
聞いたって、難癖つけになんて行かないよ?
「何もしてやれなくてごめん」
武俊くんは、テーブルに額がぶつかりそうな勢いで頭を下げた。
謝られたいわけじゃない。好きになって欲しいだけ。
でも、それが一番難しい。
「もういいよ。さよなら」
本当に言いたいことは、何も言えなかった。
好きだよ。大好きだった。
武俊くんに好きになって欲しかった。
……ずっと片思いをしていればよかった。
一緒に居た期間が、一番つらかった。



