降り注ぐのは、君への手紙




「俺も別に何の不自由もしてねぇよ」


初めてのデートで、自分のことを話すときにいつものセリフを言ったら、武俊くんがそう返した。


「親は元気だし、親父なんて校長だしよ、ご立派なもんだろ。まあ俺は全然ご立派じゃねぇけどな」


自虐的に笑って、その後おどけたように言った。


「それより単位のほうがやべぇ」

「あはは。同じ大学なら代返してあげたのに」

「いいよ。出席足りねぇのは自分のせいだ。夜中遊びすぎて寝過ごすとか馬鹿だろ、俺」


彼は、責任を他人のせいにしない。
そういうところが、ますます好きだと思った。


「ホントに、……呆れるよな」


時々、寂しそうな声で自虐的なことをポツリと呟くことがあった。
そんな時、彼は必ず窓の外を見ていて、ここではないすごく遠くを見るような眼差しをする。

同じ空間にいるのに、彼の世界に私はいない気がした。



付き合うことにしたものの、私達の関係は特に変わらなかった。

私は昔から自分の意志を表に出すのは苦手だから、自分から電話をかけるのには、結構な勇気が必要だった。
だから電話をするのも三日に一度がやっとだ。

対する武俊くんは、かければ普通に話をしてくれるけれど、かけてきてくれることは殆ど無い。

結局、彼に会いたい私は喫茶店に行く。
そして休憩時間に話をするのが、何よりの楽しみだった。

それが、付き合う前となんにも変わらないなと思っても、それ以外にやりようがなかった。