降り注ぐのは、君への手紙


心がふわりと弾みをつける。

武俊くんには、彼女、いるのかな。
そんなことも気になりだして、恋をしている自分に気づく。

それでも、普段自分の気持ちを封印して波風をたて無いことに徹している私にとっては、告白なんて大荒波を立てられるはずもなく、一年以上もバイトと常連客という何の甘さもない関係を続けていた。


武俊くんは、人気者みたいだった。
時々、大学の友だちらしき集団と一緒になることがある。

その中には、あ、この人武俊くんのこと好きなのかなって思うような人もいた。

でも武俊くんは誰にでも変わらない態度だった。

そこそこに親しげで、でも誰にも頼らない。

薄い膜みたいなのが周りに張られていて、誰も本当の武俊くんには触ることが出来ない感じ。

私はそれにホッとして、同時に落ち込む。

自分に向けられているときもその膜が剥がれることがないのを、痛感していたからだ。




私の誕生日は一月一日だ。
誰もが聞いたら忘れないけれど、私はこの日、友達や好きな人と一緒にいたことはない。

だってこの日は、家で過ごすのが普通だから。

大学二年の冬だ。

今度誕生日が来れば、二十歳。
いい節目だと思ったし、変わりたいという思いもあった。

ずっと本音を隠して笑っていても、誰も私の前で立ち止まらない。
印象に残らないまま、通り過ぎて行ってしまう。

今まではそれに何の不満もなかった。

でも彼に出会って変わった。
“いい子”じゃなくても、もういい。

彼の記憶に残りたい。
武俊くんの心に居場所が欲しい。


「付き合ってくれないかなぁ」


冗談めかしてそういった時、武俊くんはちょっと変な顔をしていた。

私の事、やっぱり好きじゃなかったんだなってその時わかったけれど、嫌われていないことはわかっていたからもうひと押しした。


「友達からでいいから。【珈琲亭】以外の場所でも会ったりしたいの」

「……ん。じゃあ」


その時初めて、武俊くんと番号交換をして。
その日、電話もかけれなかったくせに興奮して眠れなかった。