降り注ぐのは、君への手紙


マスターの珈琲はとても美味しくて、しかもあまり混んでいないので長居が出来そうだった。

むしろそれを売りにしていたのかもしれない。
お客さんはみんな、ノートパソコンを持ち込んで、カタカタとキーボードを奏でていた。

私が行くと、必ず窓際の二番めの席を陣取っている男の人が、

「ここだとネットが使えないから逆に集中できる」

と言って、いつも世話になっているからとマスターに本を渡したのを見たことがある。

この店の一角には本棚があり、文庫や新書、サインなんかが並べられていたのだけど、その本はいつしかそこに加えられていた。

作家さんの中では有名な店なのかもしれない。


私はこの店をレポートを書く時に利用することにした。

最初は珈琲とケーキ一つで長居することにドキドキしていたけれど、慣れてくれば落ち着きへと変わる。

私は、マスターと武俊くんの話を聞きながら時を過ごすことが好きだった。

どうやら彼は、バイトを始めたばかりらしい。

私と同じ大学一年生。
同じ地区にある、私立の大学に通っているらしい。

毎日、違った情報が頭に入ってくる。
同じだけマスターの情報も入っていたはずなのに、思い返すのは武俊くんのことだけ。

勝手に情報を選別していたんだと思う。
怖いなと思いながらも私は彼に興味深々だったのだ。

湯気越しにみえる彼の姿が、格好良いなといつも思っていたから。