降り注ぐのは、君への手紙


私は、不満を口にすることが苦手だ。
言葉に出すと、それは勝手に進化し続けてしまう。

中学の時、ちょっとした愚痴をこぼしただけで、私が悪口を言ったという話にまで発展したことがある。

言葉は怖い。
人の心は見えないからもっと怖い。

だから私は、表面に貼り付けた笑顔を武器に、人の波を渡ってきた。

それは上手い生き方だと自分では思っていたけれど、予想以上に疲れることも事実だ。

どこかで息を抜きたいと思っていた時、【珈琲亭】という喫茶店が落ち着く、という話を小耳に挟んだ。

珈琲しか出なさそうな名前の喫茶店だなって思ったらちょっとおかしくなって、興味も惹かれて行ってみた。

そこで出会ったのが武俊くんだ。


最初の印象は、店員さんの割に無愛想だなってこと。


「いらっしゃいませ」


口ではそういうけど、表情はちっとも笑ってなくて怖かった。

いいタイミングでマスターが「こら、タケ。もっと愛想良く」って言わなかったら、その場で帰ってしまったかも知れない。


「好みとかあります? 苦さとか、マスター、結構きいてくれるんで」

「え? あ、じゃあ。アメリカン……よりも少し薄目の珈琲をブラックで飲みたいの」

「ん。了解しましたー」


メニューを奪った武俊くんに、マスターがまた「かしこまりました、だ。馬鹿」と諌める。
そのやりとりが面白くて、くすくす笑ってしまった。