降り注ぐのは、君への手紙


そうして何年、もしかしたら十何年と経っていたかもしれない。

いつしか、僕の世界の中に時折宮子が現れるようになっていた。

夢現のような状態で、僕は彼女と話をした。
公園のベンチに座って、「なぁ、宮子」と話しかける。


君が陣痛で病院に入った時、僕は心配で心配で気が狂いそうだった。
でも無事に生まれてくれて、心底安心したよ。
君は母親になってからますます強くなっていった。

教師をしている君はいつも背筋が伸びていて素敵だった。
でも我が子に厳しすぎやしないかい?

孫というものがこんなに可愛いと思わなかったね。
しかも綾音は君に似ている。きっと美人に育つね。


返事はなかったが、時々頷き返してくれる。
話している時の心地よさと言ったらなかった。


春の日差し、夏の熱気、秋の匂い、冬の寒さ。
宮子といると、そのどれもが愛おしい。

毎日、その感覚が欲しくて出かけた。

夢現の中で宮子は笑う。
全く仕方ないわね、という顔をして。

でも捕まえようとすれば、宮子は一瞬で消えてしまう。
僕は泣きつきたい気持ちを抑えて、ただ日々の話を続けた。


なあ、宮子どこにいるんだい?
今の僕はまるで迷子だ。

君の影をちゃんと見つけることが出来なくて。

ただ毎日外に出て、歩いて、話しかけて、そして。



……そしていつしか、ここにいた。