どうやって葬儀をこなしたのかは覚えていない。
けれども僕は喪主として挨拶もこなし、彼女の生徒や同僚が号泣するのを静かに見つめた。
感情の線が切れたようだった。
何を見ても感動することはなく、何を食べても美味しくない。
絶望するとはこんな状態か、と思った。
生きている意味をもう一度見つけられるとは思えない。
いっそ後を追って死んでしまおうかとも考えた。
死なずに済んだのは、嫁に行ったばかりの娘が泊まりこんで見張ってくれたからだ。
腹に子を宿した娘の懸命な姿に、この子たちのために生きるべきだと思えたから。
一緒に暮らそうと娘も息子も言ってくれたが、断った。
宮子との思い出の家を離れる気は無かった。
生という状態を保つためだけに仕事をして、彼女の思い出をたどるように毎日散歩を重ねた。
やがて体は思うように動かなくなり、仕事をやめた後もずっと散歩だけは欠かさなかった。
いつも宮子の影を追って歩いていたのに、今は前には何もない。
僕は道標もなくたださまよい歩く。
思い出の宮子を追って、でもそれを見つけることができなくて。
僕はいつも迷子の気分で途方に暮れる。



