降り注ぐのは、君への手紙



庭にひまわりを植えて、秋には銀杏の公園を散歩する。
先に歩く宮子の影を追うのが、僕の定番の歩き方だ。

冬は隣家の寒椿を柵越しに愛で、春は必ず桜を見に行った。
 
宮子はその後も教師を続け、授かった子供は二人。

甘えん坊の長男は、厳しい宮子に反発したこともあったが、やがて立ち直り自立した。

様々な苦労を共に乗り越え、下の娘が嫁に行った年のことだ。


この頃宮子は物忘れが激しくなっていて、同じことを何度も繰り返していうことがあったから、僕は冗談交じりで言った。


「まさかボケてきたわけじゃないよな。自分の家に帰れなくなるとかやめてくれよ」

「大丈夫。私がどこに行っても、あなたがちゃんと探しだすから」

「……それもそうだな」

「そうよ。あなたは案外執念深い」

「わかった。宮子がどこに行っても僕が必ず見つける」


久しぶりに二人きりになって気が緩んだのか、常には言わない甘い言葉が口をついて出てきた。
恥ずかしさに負けて、散歩に行こうか、と言い出したのは僕だった。


そしてその三ヶ月後、あっけなく宮子は死んだ。


頭痛がする、と何度か言っていた。
でも大したことはないと笑っていた。

僕はそれを信じて何もしなかった。
病魔が彼女に忍び寄っている可能性など、少しも考えたりしなかった。

倒れて意識不明になり、意識が戻らぬまま、彼女は二度と目を開けなかった。