「あなたが事故にあったのがいつかは知りませんが、今日は四月の十五日ですよ」
男がボソリという声が耳に届く。
じゃあ、一月以上が経過してるんじゃないか。
俺は鏡から目を離せないまま、頭の中だけで計算した。
「おじさまを追いかけるための三年がようやく終わったのにね」
猫の背を撫でながら、成美は寂しそうに呟く。
雨が窓を強く打ち付けて、成美はそれを挑むように睨んだ。
「……私にあんなことまでしておいて、そのまま逃げるなんて許さないわ」
まるで自分に言われているようで胸が詰まる。
いや、俺に言われているのか?
悪かったよ。
無理やりキスとかして。
でも俺死んじまったんだし、冥土の土産と思って諦めてくれよ。
まあかなり気持よかったけど。柔らかくていい匂いもして、胸がきゅっと絞られるようで。
できればもっと味わいたい。
許してもらえるなら今すぐでも触れたい。
あんな無理矢理なんかじゃなく、もっと優しく、大切に。
「にゃーん」
猫の声に、成美のキツイ眼差しが緩んだ。
と途端に、泣きそうな顔になっておでこを窓にぶつけた。
「早く起きてよ……。武俊くん」
「……は?」
ちょっと待てよ。
俺は死んだんだろ?



