体育館から歓声とともにあふれるように人が出てきた。
沢山の卒業生。その中にきっと成美も、そして体育館の中にはまだ親父もいるはずだ。
俺がそっちに意識をやった瞬間に、猫は何を思ったか道路をまたぐように走りだした。
「みゃーお」
「あ、おい、猫」
と同時に、車の急ブレーキ音がする。
よりにもよって運送業者の大きなトラックじゃねぇか。
「危ねぇ!」
何も考えてなかった。
ただ、反射的に俺は駆け出していた。
キャーと、叫ぶような声が学校の方から沸く。
正義感なんてこれっぽっちも持ちあわせてないはずなのに。
猫なんて、どうでもいいだろうって冷静になれば思うのに。
やっちまった。
猫救って自分が死んじまうとか。
イマドキ英雄にもなりきれないくらいダサい。
それでも、やっちまったもんは仕方ねーか。
成美。
謝ることさえ出来なかったな。
泣かせてゴメン。
……俺が、お前をとびきり綺麗にしたかったよ。
きれいな髪や瞳を封じ込めることなく、自由に笑わせてやりたかった。



