降り注ぐのは、君への手紙


「そうやってお前は色んな物を切り捨てていくんだ? 親父にばっか夢中になって?」

「た、武俊くん、やめて」


俺は彼女に顔を近づけた。震える彼女の振動が俺にまで伝わってくる。

指で彼女のおさげの結び目に触れ、力いっぱいゴムを引き抜く。数本抜けた彼女の髪の毛が、指先をかすめて落ちていった。

「いたっ」

俺は彼女の顎の辺りに手を這わせ、そのまま髪の毛に指を突っ込む。結われていた跡が、俺の手櫛でサラリと解ける。その間、成美は固く目をつぶって震える体を抑えていた。

解けた瞬間にシャンプーの香りが立ち上った。


鼻腔をくすぐる甘い匂いに、胸がわしづかみにされたような気がした。


なんで成美は、受け入れてももらえないのに親父を思い続けられるんだ。

誰も入る隙がない。成美の気持ちは痛いほど頑なで俺の侵入を拒み続ける。


「報われない恋も長すぎると惨めだ。見てるこっちが嫌になるんだよ!」


それを一番知っているのは俺だ。
苦しくて、切なくて、なのに止められなくて。
なんで成美はそうやって見返りを求めずにいられるんだ。

俺は、……俺は無理だ。



「放っておいてよ」

「放っておけるかよ。俺の親父だぞ? それにっ」



――俺だって限界だ。


完全に勢いだった。
見上げてくる彼女の瞳と、震える艶のある唇に吸い寄せられたように、俺は彼女の唇を塞いでいた。