降り注ぐのは、君への手紙


その後、「高校生の指導をしてみたい」と、成美は私立の高校の教員に再就職した。
成美は両方の教員免許を持っていたのだ。

その選択は正解だったようで、新しい高校では、それなりに上手く勤めあげていたようだ。


そして時が過ぎ、俺と成美は結婚した。新居にはもちろんイチも連れて行く。

長男が生まれて三年して、イチが死んで。
その悲しみが癒える頃、次男がが生まれた。

共働きの生活は忙しかったが、充実していたとも言える。
成美とおふくろの関係も良好だったので、親は快く子守を引き受けてくれたりと協力的だったのも助かった。

そして、俺が四十五になった年、ずっと通いつめていた喫茶店のマスターが倒れた。


「俺もそろそろ歳かね」


見舞いに行った先で、マスターはそんなことを言う。

確かに、薄暗い店で見ていた時と違って、病院で見るマスターは痩せていたしとても小さく見えた。ご自慢の顎ヒゲを剃り上げていたのが、俺的には一番ショックだった。


「タケはどうだ、仕事」

「まーボチボチ?」


俺はそんなに能力があるわけでも無いので、真面目に仕事してれば上がれる出世の階段を普通に登った。四十五で係長は特別偉くも何ともない。


「俺、店を閉めようかと思ってさ」

「え?」


驚いて顔を上げた。

大学の時からバイトしていて、卒業してからもずっと通いつめてた喫茶店。
それが無くなるのは、青春時代をも切り取られてしまうような感覚だった。


「寂しいじゃん。マスターもうちょっと頑張れよ」

「そうしたいんだがなぁ……」