降り注ぐのは、君への手紙

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それから、俺と成美は付き合い始めたが、案の定と言うかなんというか、俺達は何度も喧嘩した。

昔と違って言い返してくることを覚えた成美は、賢いだけに反論出来ないようなことを言う。

俺がキレて、成美も怒って。
その場は喧嘩別れして、夜中になってから顔が見たくなって窓を開ける。

早々に寝ちまう成美の部屋は、夜の十一時には真っ暗だ。
そんな時、俺を慰めてくれるのは猫のイチ。
もちろん遠目でよく見えないが、窓辺でこっちを向いてしっぽを振ってくれる。


「イチに浮気すんぞ。こんちくしょう」


まあ、イチはオスなんだがな。

仕方なく、窓辺でやけ酒を煽る俺。


次の日、成美が気まずそうな顔で珈琲亭に来て、俺のおごりで仲直りするのが定番の流れだった。
マスターには「何度喧嘩してるんだよ」って笑われるほどだ。


やがて、一年遅れになった大学生活を終え、俺は大型家具店の営業として就職する。

その翌年、成美は卒業し、教師になった。
しかし、成美が挫折を経験するのはこれからだった。

教師というのは成績だけ良ければなれるものじゃない。
反抗期の中学生を相手にするのは、成美には荷が重かったのだろう。

勤め始めて半年、初めて俺に泣き言を言った。


「辞めたい。もうイヤ。あの子達、私の言うことに反抗するのが生きがいみたいに」


肩を震わせながらしがみついて、俺のシャツには彼女の涙でシミが広がっていく。