降り注ぐのは、君への手紙


「武俊くんが助けてくれた猫なの」

「ああ、そうみたいだな。いつの間にかでかくなってんじゃん」

「最初は小さかったよ。すごく怯えてて」


コートの中で暴れる猫に手を焼いたのか、成美は猫を離した。
ぴょん、と飛び出した猫はぶるると身震いをして、俺の足元の臭いをかぎ始める。


「武俊くんのこと覚えているのかな」

「まさか」

「でも懐いているみたいだよ」


猫は足の周りを歩くと「にゃーご」と鳴く。
呑気なもんだと思うけれど、コイツのお陰で会話が保てているので邪険には出来ない。


「……あの、ね。私、ずっと武俊くんに言いたいことがあったの」

「俺もあるよ。成美に言いたいこと。まあ、座ろうぜ」


二人、なんとなくベンチに座り話し始める。

そのベンチは、座ってみるととても眺めが良い。
銀杏の木が並び、手前に遊具。目の前をフレームに閉じ込めれば、立派な絵が出来上がりそうだ。


「……あの」


顔を上げたタイミングも一緒なら、口ごもるタイミングも一緒。
これじゃいつまでたっても話が出来ない。


「わ、私から言っていい?」


成美が意外なことを言い出して、俺は目を丸くしてとりあえず頷く。
猫は相変わらず時々鳴きながら成美の足元にじゃれついている。


「助けてくれてありがとう」


そんなこと言われてもピンと来ない。
成美を怖がらせたことは何度もあるが、助けたことなんかあったか?