「タケさんの珈琲が無いからですかね。美味しかったですよ、そう思いません? 妃香里さん」
妃香里はそんなヨミを見て笑う。
「思いますよ。ヨミさんが案外素直じゃないなぁって」
ヨミは頬を引くつかせて、手元の手紙に視線を落とす。
「寂しいんでしょ?」
追い打ちをかける妃香里の声には反応しない。顔を見られたくないのか、ジリジリとそっぽを向く。
「私、珈琲入れる練習しようかなぁ」
とぼけた調子で妃香里が言うと、ヨミは顔をあげて子供がおねだりをする時のような顔をした。
「妃香里さん。地味な作業はお得意ですか? 便箋づくりとか」
「私、単純作業得意ですよ」
「早く転生したいとかは?」
「いいえ。少し疲れたので休みたいなと思っています」
「では、ここで働きませんか? 閻魔様には僕からちゃんとお願いしますから」
ヨミと妃香里の間に、一瞬だけ沈黙が走る。
次の瞬間、妃香里はくしゃりと顔を緩ませて笑った。
「はい。ぜひ、お願いします」
彼女の光に照らされたように、ヨミの顔が晴れ渡った。
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