「彼女も事故で死んだらしいよ。お客さんで同じ大学だったって子が教えてくれた。タケと同じような事故だったみたいだけど、彼女は即死だったって」
「……は? まさか……」
頭の中に靄がかかる。
変な唾が湧き上がって、飲み込むのに時間がかかった。
確かに驚いたはずなのに、その驚きが何故かうそ臭く感じる。
「それが二月だったんだってよ。彼女のほうが先に死んでたんだな。……同じような事故でタケが助かったのは、もしかしたら彼女が守ってくれたのかもしれないぞ」
「……うん。そーだね」
別れた彼女。
成美のことを忘れようとして付き合って、結果的になんにもしてやれず傷つけてしまった女の子。
彼女のことを思い出すと、胸が軋む。
そして、ジリジリと焼けつくような焦りが生まれてくる。
何やってんだ、俺。
せっかく死なずに済んだのに、いつまでも足踏みしたままで。
「だから、な。お前も悔いないように頑張って生きろよ」
皆そう言うな。
頑張って生きろって。
……て、でも、あれ?
俺は他に誰にそんなことを言われたんだっけ。
「生きてる人間は、死んでしまった人の思いも背負う義務があるんだ」
「……うん」
マスターの言葉は、いつも俺を救ってくれる。
暖かい珈琲と想いを吐き出せる場所。
俺はそんな場所で、ずっとずっと守られていた。
「……俺、またバイトに復帰したいです」
「おう。短時間からにしようか。いつからにする?」
「お、いいね。タケ、復帰するのか」
端金先生まで話に入ってくる。
退院して初めて、肩から力が抜けた気がした。



