ただ、さすがは十二月。街はクリスマスムード一色で、その賑やかしさが今の俺には眩しい。
着飾って街を歩く女性たちを見て、成美を思い出す。
どうして、あんなに綺麗になったんだろう。
アイツを綺麗にしたのは、誰だ?
親父のことは、もう諦めたんだろうか。
昔、彼女が言っていた言葉を反芻する。
「でも私の三年間は、おじさまのためにあるから」
ひっつめおさげで伊達眼鏡のいい子は、親父の為のものだったのか?
じゃあ、卒業してからのこの九ヶ月は誰の為のものだった?
好きな男が出来て、そいつのために綺麗になったというなら、もう俺の出番なんて無いんじゃないか?
歩みがどんどんゆっくりになる。
なんかもう、歩くのさえも嫌になったな。
あの事故で、死んでれば良かったのかな。
そうすれば、こんな風に情けなく思うこともなくて。
成美の記憶にもいいように残ったかも知れない。
……もう、疲れた。
足が止まり、俺は道端に座り込む。
その時、ゴロゴロ、と小さな音が聞こえた。
今日は別に雨の予報は無かったはずだが、いつの間にか空に鉛色の雲が広がっている。
あたりの人がざわつき、足早になる。
俺も降り始める前に移動しちまおうと立ち上がった。
それから、数分もしない内に雨が降り出し、空に亀裂が走った。



