降り注ぐのは、君への手紙



「武俊くん、退院おめでとう」


昔は、成美から俺に話しかけてくることなど殆ど無かった。
彼女の動きに合わせて揺れる髪、大きくぱっちり開いた瞳は、昔と違って俺をちゃんと捉える。

途端に、全身の血液が顔に向かって上昇してくるような気がした。


「……武俊くん?」


不安そうな顔をした成美が、目の前で揺れる。

――恥ずかしい。

咄嗟に目を伏せ、家に駆け込んだ。


「こら、武俊」


親父の声が後ろに聞こえる。構うもんかと、俺は階段を駆け上がる。
途中で息が切れて、たった十五段にと思ったらますます情けなくなる。

こんな感覚初めてだった。

今の俺を、彼女に見られたくない。
貧弱で、半年以上も寝ていた間抜けな俺。

以前、俺はどうして成美に対してあんなに強気な態度をとれたんだ。
今は恥ずかしくて顔さえ見られない。


「悪いね。成美ちゃん。武俊のやつ、照れくさいみたいだ」

「いえ。……ただ、お礼が言いたかっただけなんです。猫、助けてくれてありがとうって。それと、……退院おめでとうございます」


親父と彼女の声に、体中の血液が暴れながら体内を巡る。

何やってんだよ俺。情けねぇだろ。
怖がらせるのも大概ダメだろうけど、逃げるとかもっとだめだろ。

それでも、足が動かない。彼女の前に立つ勇気が持てない。

初めて知った。
自信が無いって、こんな気持だったのか。