降り注ぐのは、君への手紙



そうして、順調にリハビリをこなし、俺は退院することになる。

両親……特に母親がそりゃあもう大騒ぎで、世話になった看護師や医師にあうたび、涙ながらに礼を言うもんだから恥ずかしくてたまらなかった。
病院を出るときには他人になりたいとまで願った。

普通に歩けるようにはなったが、落ちた筋肉はそう簡単には戻らない。

すっかりひょろひょろした軟弱男に成り下がった俺は、誰かに見られるのが恥ずかしくて窓の外さえ眺められなかった。

とっとと自分の部屋に退散しよう。

そう思っていたのに。


「にゃーご」


タクシーを降りた途端、猫が足元にまとわりついた。

見覚えのあるようなないような気がする茶色の塊。
どこでだっけと考えて、事故の時の猫を思い出す。

嘘だろ、俺のことが分かるのかよ。
恐ろしいな獣。

そこまで思って、血の気が引いた。

ちょっと待てよ。こいつがいるってことはつまり。


「武俊くん」


声に釣られるように顔を上げ、そこにいた彼女を見て体が震える。
名前を呼ぼうとして声が出せなかった。

そこにいたのは、お下げで伊達眼鏡のさえない女子高生なんかじゃない。
まるでサナギから抜け出た蝶のように、美しく変貌を遂げた成美だった。