降り注ぐのは、君への手紙


一度、俺を轢いたトラックの運転手もやってきた。

泣きながら「申し訳ない」と呟く彼に、こっちのほうが申し訳ないと思った。
別にトラックは悪くない。飛び出したのは俺の方だから。

それは親父もお袋も分かっているらしく、「武俊が目覚めたんだからもういいんです」と彼をなだめた。
後で聞いたら、既に示談は成立していて彼は不起訴処分になっているらしい。

それでも、目覚めるまではと毎月顔を出してくれたのだそうだ。





数日後には、親父が回復を教えたのかバイト先の喫茶店のマスターも来てくれた。

マスターは顎ヒゲをダンディーの証だと信じているヤンチャな四十歳で、常連だった喫茶店【珈琲亭】のオーナーが年齢を理由に店をたたもうとした時に、思い切って脱サラして買い取ったらしい。

“この店の看板を守りたくてな”

バイトの面接の時にそう言ったマスターを俺はカッコイイと思った。
何の気無く張り紙を見て申し込んだのだけれど、いいバイト先に当たったと喜んだもんだ。

そのマスターが、相変わらずの顎ヒゲを撫でて俺を見る。


「いやあ、本当に良かった」

「マスター迷惑かけてゴメン。無断欠勤しちゃって」

「事故って連絡出来るやつが居たら見てみたいよ。そうだろ」


マスターが笑ってくれて、俺も釣られるように笑顔になれた。