降り注ぐのは、君への手紙


別に、俺はそこまで猫に愛着があるわけじゃねぇけどな。
猫を救ったのはたまたまだ。

たまたまそこにいて、怯え具合が成美を思い起こさせたから。だからつい、手と足が出たっていうか。


「……数日は検査漬けだぞ、きっと。でも良かった。早く元気になれよな」


親父は、言葉少なな俺に気を使ったのか、話をまとめるとテレビを付けた。


「もうすぐ冬だぞ? 知ってたか」

「んー」


見たことのない芸人が、見たことのない漫才を披露している。
今年の流行語大賞ノミネートとか、知らないものばかりだ。

なんだか、全てのものに置いて行かれてしまったようで、気分は晴れなかった。






親父の言葉通り、それからの数日は検査ずくめだった。

食事も、一分がゆから始まり、徐々に固形量を増やしていく。
最初は、自分でも驚くほど食事が喉を通らなかった。

それでも、食べるものを食べて、少しずつでも歩行運動をするようになれば、体内は正常に動き出す。

リハビリはそこそこ順調に進んだ。
九ヶ月寝たきりだった俺は、看護師さんたちが何度か寝返りを打たせてくれていたらしいが、床ずれができていてのそれの治療も同時に行われる。


「成美ちゃんが見舞いに来たいって言っているんだが」


ある日、見舞いにきた親父に言われて、俺は首を振った。


「いいよ。どうせ退院したら顔見れんだろ。向かいなんだから」


冷たく言い放ったのは建前で、本心はこんな弱った状態の自分を見られたくなかった。
満足に病院内さえ歩けない、筋肉の衰えたひ弱な俺を見て、同情されるのなんてゴメンだ。