降り注ぐのは、君への手紙



「……鬼火に捕まりましたね」

「え?」

「貴方の中に、悪い鬼火が灯っています。これは僕の責任ですね。郵便局に来た時は、貴方の魂はきれいなものだったのに」


心当たりはある。
嫉妬だ。

武俊くんの好きな子を知らない時は、それはぼんやりとした像しか結ばなかった。
けれど、彼女の姿を知ったことで、悪意はその憑り代を見つけてしまった。


「貴方の居場所を用意しましょう。しばらくの間、そこで待っていてください」

「え?」

「実はね、あれから色々あったんです」


ヨミさんは唇に人差し指をあてて片目をつぶってみせた。

私は、賽の河原にある小屋に入れてもらった。
お地蔵様が三途の川を渡れずにいる子供を救済する時に子どもたちを招き入れる小屋だという。

「私、二十歳なのに」と笑うと、「見た目が子供っぽいから大丈夫です」と返された。

「ただ貴方は、自分の中の鬼火を押さえつける努力をしなければなりません。そうですね。しばらくはこの経典を読んでいてください。お腹の痛みも楽になると思いますよ。また覗きに来ます」

「ヨミさん」

「このままだと現世に呪い出ることになるでしょうし、そうなってから三途の川を渡ったとしたら行き先は地獄で決定ですよ。ご自分を信じなさい。彼との別れを決断した時の自分を思い起こすんです」

「でも」

「また来ます」


そうして、ヨミさんは居なくなってしまった。


私は難しそうな経文を毎日読み続けた。
不思議と、これを読んでいるとお腹の痛みは和らいでいく。
けれど、再び武俊くんのことを思うと、胸がざわつく。

悪意の燃料はなんだろう。
死してなお、私が思い切れないのはどうしてなんだろう。

武俊くんのせい?

確かに、彼だって悪い。
好きになれないのなら最初から付き合うなんて言わなければいいのだ。

でも一番は。

最後の最後でいい子になろうと、悪意を貯めたまま俯いてしまった自分だ。