「……これください」
衝動的に、チョコレートを買った。
大きなハート型の、いかにもバレンタインって感じのチョコレート。
それを綺麗にラッピングしてもらって、私は店を飛び出す。
もう一度向き合って、彼の恋の終わりを一緒に見届ける覚悟はある?
ずっと傍にいるから、貴方の恋が終わったら今度は私を見てって言える?
それはとても長くて苦しいかもしれない。
私はまた、同じように傷つくかもしれない。
だけど、それを我慢してもいいと思うほど、武俊くんが好きだと思うなら――
「危ないっ」
誰かの声が、耳をつんざいた。
金切り声に似たブレーキ音がして、車が自分の方に突っ込んでくるのが見えた。
こんな時って、逃げれないものだったんだ。
危ないってわかっているのに、何故か足は止まってしまった。
シルバーの車体がどんどん近づいてくる。
チョコレートが、私の手から離れて宙を舞った。



