「……じゃ、行ってみようかな」


まだ気は乗らなかったけれど、亘の笑顔が見たくてそう言った。
願いどおりに、彼の顔はぱあっと晴れていく。


「そうか。じゃあ週末。金曜の夜とかどうだ?」

「あたし、その日はバイト二十時まで」

「丁度いいじゃん。コンビニまで迎えに行くよ」

「うん。……ありがと」

わざわざ迎えにまで来てくれるのは、亘なりにあたしの恐怖感を分かってくれているからだろう。
少しずつ足を外に向けなきゃいけない。
それは、あたし自身もそう思っているし、亘も願ってくれていることだ。

恐怖感は飲み込んで、あたしはニッコリと笑ってみせた。


「ごちそーさん」

「おかわりいいの?」

「ああ。悪いけど今日はもう帰るな。明日、早いんだ」

「……そっか」

「週末、楽しみにしてるからな」


彼はあたしの顎をくいと持ち上げて唇を重ねた。今度はビールの味がする。
その余韻に浸っている内に、彼は再び上着を着こんだ。