一生懸命言い訳をした。
ホントは初めてのキスの相手が響ちゃんじゃなかったことに、動揺していたから。


先輩から顔をそむけて涙をふくと、とびっきりの笑顔を作る。


「先輩、連れてきてくれて、ありがとう」


先輩は騙されてくれただろうか。


「いくらでも連れてきてやるよ」


私と同じように笑った哲哉先輩は、私の手を握った。


それから私達の関係はどんどん深まった。
先輩に勉強を教えてもらったり、デートを重ねた。

先輩に妹がいることも、スポーツ観戦が好きなことも、一番好きな食べ物がカレーライスなことも、少しずつ知った。


そして私も、響ちゃんとの関係以外は積極的に話した。

もっと先輩とつながりたい。
私の頭の中を、哲哉先輩でいっぱいにしたい。

徐々に言いたいことが言えるようになった私は、先輩に甘え、響ちゃんを頭の中から追い出す努力をした。