夏目は、まじまじと見られていることから照れたようにはにかむ。



綺麗なのに、なんでだろ。

どこか違和感を感じて……その理由に気づいた瞬間、俺は派手に吹き出した。



「ふは、おま、浴衣の合わせ目逆……っ」



浴衣や着物の合わせ目は洋服と違って男女統一で、左が上。

右手を襟に差しこめるように着るんだよー、と母に着つけてもらいながら妹が騒いでいたこともあって、比較的すぐに気づいたんだ。



「それじゃ死んでるぞ、お前」



さすが夏目。

やらかすドジのレベルが違う。



胸元から上を隠す彼女を散々笑って、落ち着いてから「浴衣直す?」と訊くと、すがるように一睨み。

それから背を伸ばしたまま、ぱっと下を向く。



「いいよ、大丈夫。
そうそう人の合わせ目なんて気にする人なんていないと思うし」



うん、きっと平気! とひとりで話を完結させた夏目に「そっか」と返す。






「そういえば、夏目はひとりなわけ?
友だちと行くって言ってなかった?」

「えっと、まぁ……」



迷子だ。

これ絶対迷子だよ。

なんて言ったって夏目だし。