そそくさとふたりで逃げ出して、人混みに紛れる。

落ち着いてから、そっと顔を見合わせた。



「……えへへ。これ、ありがとう」

「いーえ」

「わたしの手、こう、ぎゅーって重ねたまま取れちゃうなんてすごいよ」



夏目のドジはいつものことだけど、このタイミングでこれはやめてくれ!

今更だけど、恥ずかしい!



さっきは俺もなにも思わなかったけど……。



すぐそばで聞こえた声。

まとめた髪の後れ毛。

腕の中にすっぽりと入る華奢な体。

わずかにのぞく白い肌。



それらを思い出してしまい、こみ上げるなにかを堪える。



「水谷くん?」



俺を見上げる夏目の耳元でしゃらりと簪が揺れる。



「それ。そのヨーヨーと簪。似てるな」



水色の球体に波打つ線が入っていて、涼しげな雰囲気。



「似合ってる」



夏目は嬉しそうにポン、とヨーヨーを突いた。