仕方がないんだ。私にとって何より大事なものは、この世からひとつ残らず消えてしまった。


それが何より哀しくて、どうしようもない。取り戻したくて、1日だって忘れられない。毎日、記憶の片鱗に触れることが起こるたび、想ってしまう。


「いっくん……」


逢いたい。もう一度、あなたの夢を見たい。


現実じゃないと分かっていても、自分で空想にふけるよりはずっとマシだった。どんなものでも、いっくんに逢えるなら、彼の夢を見たかった。


私の声が届かなくても、触れ合うことができなくても、微笑まれることもなくたって、いいから。


「逢わせてよ……」


痛む頭のどこかで“逢えないよ”と囁かれることが、はがゆい。


そうして私は今日も、彼が存在する空想の世界をただようしかなくて。我に返ったときには虚しさが襲い、いっそう強く焦がれてしまう。


逢いたくて、逢いたくて、泣きだしそうになっても“私”は望まない夢ばかりを見てきた。


目を瞑っているのに、電源を落としたのに、事故の報道を映したテレビの存在が大きくなっていく。


……直感なんて、そんないいものじゃない。



夢を見る。

目を逸らしたくても、声を出したくても、適うことのない、未来を映すだけの夢を。



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