ティファニーの白い手首には、強く縛られていた証拠である縄の青紫色の跡がくっきり残っている。
スカートで見えないが、恐らく足にもあるのだろう。
縛り付けられていた手足も、少し肉を抉られた頬の傷もきっと痛かったはずだ。
ティファニーに再び同じ思いをさせたくない……
「ニコ、お願い。ルースに戻って」
縄の跡に気を取られていたニコは、ティファニーの声にはっとした。
目隠しをしているが、ティファニーの顔つきは有無を言わさない強いものだった。
揺るぎないほど意思が堅いと悟る。
これは、聞き入れるべきだ。
聞き入れなくてはならない命令に近いものだ。
そう判断したニコは、ティファニーの頭をくしゃりと撫でて手綱を握り直した。
「……分かりました、ルースへ行きましょう」
「っおい、ニコ」
「ティファニーがどうしても行かなければならないと思うならぼくはそうします。
……大丈夫ですよ、絶対に守りますから」
本当の意味で主人になってくれた人。
自分と家族になることを望んでくれた人。
ティファニーはニコにとってかけがえのない存在となっていた。
懸念されるリスクによってティファニーを失ってしまうような事態になるのは嫌だが、それを避けたがために彼女が後悔の念に苦しむ姿を見るのはもっと嫌だ。
ならば自分が守り通せばいい。
邪魔をする者たちがいるのならば、自分が盾となってティファニーの望みを叶えるまでのことだ。


